私が社会保険と労働保険に拘る理由

2002(平成14)年の9月、当時29歳だった私は福岡市博多区に所在する「JR九州」こと九州旅客鉄道㈱の完全子会社が運営していた某営業所に臨時社員、早い話がアルバイトとして雇用されました。

この某営業所が出した求人募集に応募したのは私と6歳年上である男性のSさんの計2名、

入社前の8月下旬にK営業所長とT統括主任による面接を受け、その席でK営業所長が私達に問いかけます。

「君達2人は多分、国民健康保険と国民年金に加入していると思うけど、うちの営業所で半年間頑張れば、7ヶ月目から健康保険と厚生年金保険、それに加えて雇用保険にも加入出来るよ」


その後2分間の沈黙を経て私とSさんの採用が決まり、T統括主任から雇用に関する説明がありました。

「あなた方は当営業所にて臨時社員、世間的に言えばアルバイトとしての雇用契約となります。

当営業所の臨時社員は臨時社員Aと臨時社員Bの2つに分かれており、社会保険付きの臨時社員Aは1年の雇用契約、社会保険無しの臨時社員Bは2ヶ月の雇用契約となっております。

尚、最初の半年間に関しては臨時社員Bとなります」


私とSさんは9月より某営業所にて働き始めます。

仕事内容は九州最大の鉄道駅であるJR博多駅のホームに発着する特急列車に車内販売用のコーヒーや駅弁を積み下ろしする配送作業であり、仕事柄「泊まり」の日の午前中に出勤し、深夜時間帯の仮眠を挟んで「明け」の日の午前中に退勤する、といった24時間勤務でした。

この勤務体系、タクシー乗務員の方々に似ていますね。


先輩方の指導により少しずつ仕事を覚え、徐々に職場の雰囲気にも慣れていった私とSさんですが、やかてショッキングなことに気付きます。


この某営業所は2ヶ所の部署が存在し、1つは某営業所を管轄するJR九州の完全子会社が受け持つ特急列車の担当、もう1つがJR九州から業務を委託された特急列車の担当、

前者は男性のみの配送員と女性のみの車内販売員で構成された「自社の雇用者」、後者は男性のみの配送員で構成され、車内販売に関してはJR九州が直接雇用をしていた「レディ」と呼ばれる客室乗務員が行う「他社の雇用者」、

JR九州の完全子会社である某営業所がどちらの雇用者の待遇を優先するか、は誰でも分かりますよね。

路線バス会社の「管理委託制度」と思って頂ければイメージが湧くと思います。


実を言いますと私とSさんは「他社の雇用者」、

某営業所に於いて冷遇され、実際問題としてアルバイトの先輩方は何年経っても社会保険無しの臨時社員Bのままであり、社会保険付きの臨時社員Aとなることは到底不可能なことが判明したことで私は失望し、その「実態」をSさんにを話すと憤慨していました。

あっ、当然ですが某営業所の行為は健康保険法、厚生年金保険法、雇用保険法に接触するのは言うまでもありません!!


そのため、私は某営業所を半年で退職し、様々な会社へ面接に向かいますが、運悪く「失われた20年」の時期と被っていた為に不採用の連続、中には「社会保険未加入」を条件に採用してくれた会社もありましたが、即断りました。

この件は多分「時効」になったと信じていますので話しますが、この頃の職業安定所(ハローワーク)は「各種社会保険完備」などと偉そうに書かれたハッタリ求人票を平気で受理し、いざ求職者がハローワークに苦情を申し出てもハッタリ求人票を提出した経営者を庇っていたぐらいでしたからね。

仕方なく社会保険は諦め、最終的には某軽運送会社に勤務しましたが、私達雇用者は「自営業者」扱いということで社会保険は無し、でも経営者一族はチャッカリ社会保険に加入していました…。


やがて某営業所の退職から約3年の月日が経ち、遂に長年の夢だった社会保険に加入出来たものの、その数ヶ月後に勤務先の某軽運送会社が倒産、

露頭に迷ったものの、すぐにピンチをチャンスに切り替え、もし奇跡的に社会保険へ加入出来たら是非とも挑戦してみたかった社会保険労務士国家試験の勉強をスタートさせることとなります。


社会保険労務士国家試験の受験勉強は終始独学を通しましたが、勉強をすればするほど知識が増えていくのが楽しくて全く苦になりませんでした。

但し、社会保険に加入出来たからそう思ったのでありまして、もし社会保険へ加入出来なかった状態で受験勉強を始めても国民健康保険と政府管掌健康保険(当時)、国民年金と厚生年金の違いを知れば知るほど頭に血が登って最終的にはテキストを破り捨てたでしょうね。

社会保険は社会人にとって最高の宝物です!!

特定社会保険労務士 山本 幸司

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